食後の歯磨きは30分あけてから…ではなくて早く。

食後の歯磨きは30分あけてから…ではなくて早く。

2023年6月13日

はつおい歯科室 べいちょうです。

食後の歯磨きは30分あけてから、という説があるそうですね?
私はこれを歯学部で習った記憶はありません。ここ10年くらいの間で言われ始めた様に思うのですが、どうなのでしょうか?根拠の論文を読めていないのですが、これはどうもNHKの番組で言われ始めたものだそうですね。それが広まっていて、尾ひれ葉ひれがついたもののようです。
私は「関係ないから磨いてください」と思っています。
個人の見解ですとなかなか確度が低いですので、学会の見解を探してみました。

「結論としては、通常の食事の時は早めに歯みがきをして歯垢とその中の細菌を取り除いて脱灰を防ぐことの方が重要です。」

日本小児歯科学会『食後の歯磨きについて(学会からの提言)』


「新ステートメント
食後の歯磨きについては、歯のう蝕(ムシ歯)予防の見地から、これまで一般的に推奨されてきた通り、食後の早い時間内に行なうことをお薦めします。ただし、酸性の強い飲料などの飲食物を摂った場合には、歯の酸蝕(酸によって歯の表面が溶けること)に留意して歯みがきすることをお薦めします(なお、「酸性飲食物を摂取後30 分間は歯磨きを避けるべき」ということの確認はできていません)。

日本歯科保存学会『「食後30分間は歯磨きを避けること」についての見解(ステートメント)』

他にも色々と読んではみましたが「30分あける」妥当な根拠は見当たりませんでした。
根拠で解説されている事の多いステファンカーブですが、プラーク底部の酸性度を調べたもので、歯の脱灰度(溶けた度合い)を調べたものではありません。歯が酸に晒されて、時間の経過でう蝕を作る、というのはニューブラン 「4つの輪」で説明されている通りで、むし歯形成や歯周病形成に必須の「時間」をわざわざ与えているような気がしてなりません。(過去の記事『感染症って本当ですか?!』も読んでみてください!)

元々の論文では実験に「象牙質」が使われているようです。象牙質は歯の内部、エナメル質の内側の組織です。エナメル質は象牙質よりも硬く、耐酸性能力も高いです。象牙質が大きく露出している場合はこの論文にも当てはまる部分があるかもしれませんが、基本的には
細菌がいる」→「細菌が糖を摂取」→「細菌の酸産生」→「酸の停滞」→「時間の経過」→「歯の脱灰」
この繰り返しによる「齲窩の形成」がむし歯になります。
はやい段階で取り除いた方がよさそうじゃないですか…?
・歯に酸をかけたらすぐ溶ける、ものではありません。反応時間が必要です。
・プラークが多い場合には唾液の緩衝作用という、酸を中和する能力が届かない為にむし歯が起こります。
・むし歯の初期では歯面に唾液が行き渡る事でミネラルを歯が吸収して「再石灰化」が起こりますが、プラークがあればそれは起こりません。

と、いう事で、歯は「早く」磨きましょう。

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