はつおい歯科室 べいちょうです。
歯科矯正のイメージ、皆さんはどんな事を思い浮かべるでしょうか。
綺麗な歯並び(笑顔がステキに)
顔貌の変化(横顔をすらっと)
コンプレックスの克服(自信を持てる)
大まかにはこの様なイメージでしょうか。
私(歯科医師)からした歯科矯正は
①歯並びの改善(う蝕・歯周病・口臭のリスク低減)
②咬合の改善(う蝕・歯周病・顎関節症のリスク低減)
③デンタルIQの向上(歯科疾患・口腔疾患への知識・意識の向上)
④歯科受診のハードル低減(歯科医院への通いやすさ)
⑤中年期・高齢期以降の歯科疾患・呼吸器疾患・消化器疾患のリスク低減(口腔機能の向上)
特に①と②、⑤は超が何個もつく重要なポイントです。
歯並びのせいでむし歯になった、抜くことになった、歯周病になった、本当に多いんです。
ただ、現代矯正には違和感を感じていたんです。
歯科矯正の1番目に注目されるのは、歯並びでしょう。
歯が綺麗に並んでいる事は見た目にも健康にも、自信にもつながります。とても重要。
だけど…。
上の歯と下の歯がそれぞれ綺麗に並んでいて、噛み合っていない…。
綺麗に並んでいるけど、歯と歯の間はスカスカ…。
治療後に「ワイヤーを外せない」と言われている…。
歯並びは良いけど、骨からは飛び出ている…。
歯を並べるだけが、歯科矯正になりつつあります。
ですが私が習った時、「歯科矯正は歯並びだけを治すのは間違い」と習ったのです。
歯科矯正は本来、歯並びと噛み合わせを改善することで、口腔内のあらゆるリスクを改善できる治療です。
結果、高齢期以降にも自分の歯で食べて、噛めて、喋れて、凄い治療だ。と習っていました。
その時に習っていた、NG治療を、歯科医師になった今はよく目にする様になりました。
そう思って「矯正はやらない」と考えていた時に出会ったのがビムラー矯正です。
ビムラー矯正は、小児期に口腔内に入れておく事で顎の成長と筋肉の成長を促す装置です。
歯並びは頬と舌の間にしか並びませんから、頬筋と舌筋の不均衡や過緊張、過弛緩によって歯並びは変化します。そして、歯は顎の骨に並んでいますから、顎の大きさで限界が決まっています。顎が成長するのは小児期ですから、限界は小児期に決まるとも言えます。
顎が小さいと、歯だけでなく、舌の可動範囲も限定されます。動きを制限された舌筋は、育ってくれません。舌は見えている部分の奥にまで繋がった筋肉群です。舌の筋肉が育たないことで、どうなるかというと、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。顎が小さいと歯並びも悪くなりやすいですから、むし歯・歯周病・顎関節症・肺炎、リスクは高まるでしょう。
頬筋はどうでしょう。厳密には口輪筋や笑筋、頬骨筋などで、今回は頬筋としてこれらを含んでお話しします。今の児童はマスクをする事に抵抗がないようで、むしろマスクをしないと出かけられない子も中にはいるそうです。そして、口呼吸の児童が大変多くいるように感じます。口呼吸というのは読んで字の如くですが、口がぽかんと開いている、だけではなくて、それは頬筋が弛緩している(使われていない)状態になっているのです。姿勢と同じで、普段は意識することがありません。閉じようとすれば閉じますが、気が逸れるとぽかんと開いてしまいます。筋肉が弱ってしまっているんです。頬筋が弱くなると、歯を外から支える力が失われます。歯並びは外に開いて、歯と歯の間が開いて、出っ歯になっていきます。
では逆に、顎の骨がしっかりと成長して、頬筋と舌筋がよく動かされてくれると、どうなるでしょう。
まず口の中の空間が広がる事が重要です。現代の児童は軟食化が進んで顎骨の発達が不十分とされています。顎は噛むことで成長しますから、噛む回数や力が弱いと横にも縦にも奥行きでも、顎は小さくなります。が、これを広げてあげることで顎が上下・左右・前後に発達してくれて、歯の並ぶ顎を育ててくれます。広がった口腔内の空間では、舌が大きく動くことで筋肉も発達してくれます。口の中に入れた装置を保持するために、意識して口を閉じて胸の筋肉も発達してくれます。
歯は顎骨の上にあって、頬と舌の間に並びます。顎が成長してくれて、頬と舌の筋肉が歯を並べてくれるのです。
私、名古屋で特別展示されている古代DNA展に行ってきました。こういった展示で目がいくのは、古代日本に住まう人たちの顎と歯です。そればかり見てしまいます。
古代日本に住む人たち、歯並びがすごく良いんです。砂糖も摂らないのでむし歯もありません。綺麗に並んで綺麗に噛み合っています。人は、本来は歯並びが良い遺伝を持っていて、それを乗り越える習慣で歯並びを悪くしているのかもしれません。
歯並びの悪い野生動物、見ないですね。生き延びられないんだと思うんです。
観光地で観光客に「キーっ!」とやっている、お猿さん、いますね。
歯並び、綺麗じゃないですか?良いなぁって思います。
無駄な話をしました。
そんな本来は並んでくれる歯を、並べられるように発達を促すのがビムラー矯正で、それは見た目だけではなくて機能的にも必要な発達であり、その発達を促すことで将来的に、高齢になった時にも効果を発揮できる治療だ。と惚れ込んだのでした。
歯科矯正にはデメリットももちろんありますので、続きをまた書かせていただきます!