消費者を擽る大人たち

消費者を擽る大人たち

はつおい歯科室 べいちょうです。

最近、YouTubeなどを見ていると、動画の合間に色々な広告が流れてきますね。

昨日、何度も流れてきたのがこんな広告。
「あなたに見合った収入が分かる!」

…「見合った収入」って(笑)

と、私は思わず苦笑してしまったのですが、被雇用者で現状に不満を抱えている人は世の中に沢山いますから、刺さる人には刺さる言葉なのでしょう。

マーケティングの世界では、需要を起こすには**「ギャップ」**を生まなくてはいけないと言われます。

これは歯科業界でもよくある話です。 「あそこの医院は〇〇だから」 「この治療法は古いよ」 などと、わざと他への疑念を抱かせるような手法。 整形外科と整骨院、整体などの間でも、似たような“いざこざ”を感じることがあります。

自分の意見だけを伝えて振り向いてもらうのは難しいのかもしれません。 ですが、「他を下げれば自分が上がる」ということは決してないはず。 その歪んだ競争で犠牲になるのは、いつだって患者さんです。

冒頭の広告で言えば、「自分の価値は収入に見合っていないのでは?」と猜疑心をくすぐり、不満を喚起して、転職市場という消費の場へ引きずり込む手口なのだろうと思います。(動画を見ていないので断じるのは失礼かもしれませんが…)

現状への不満を具現化させて、かつ「見合った収入」なる謎の尺度で「自分の価値」を見誤らせる。 なかなか恐ろしいことです。

私自身、勤務医の頃に転職を考えて、他の院長先生や経営者の方とお話ししたことがありました。

当時、提示された金額は、その時の給与の3~5倍。 「3年後には〇〇万円」と言われた額に至っては、当時の6倍以上でした(笑)。

私は当時、いわゆる「長時間超労働」みたいな状態で働いていました。 昼休みは「時間をかけて診療できる時間」。 休みの日は「医院のブログを書いたり会議に出たりする日」。

私が持参した診療実績の数字は、相手が「本当?」と疑うくらい結果を出していました。 一般的に、「給与の3倍の粗利を出して初めてスタートライン」なんて言われますが、私は当時、給与の12倍前後の粗利を出していました。 それだけ給与が低かったのに、よく頑張っていたものです(苦笑)。

しかし、開業を考えて経営や数字を勉強し始めると、なおさら「ギャップ」を認識してしまうのです。

  • 私の生活は変わらないのに、院長の生活は豪華になっている様だぞ?
  • 仕事は増えて無給労働はうなぎ登りなのに、院長の労働時間は減っているぞ?

特に当時はコロナ禍でした。 従業員には「外出を控えろ」と減給までちらつかせて厳しく言う傍ら、ご本人は遠方のタピオカ屋まで足を運んでいたり…。

もちろん、私には見えない、知りえない事情が経営者にはあったはずです。 ただ、「当時の私にはそう見えた」というだけのこと。

そんな中で院長が全体に向けて放った言葉が、決定打でした。 「内部留保を増やしたい」

当時の院長がどの程度の認識でそれを発言したのかは分かりませんが、私には「固定費(君たちの給与)は増やさないよ」と翻訳されて伝わりました。 すでにギャップを抱えている時に、その解消は見込めないと分かれば、「ここに居ても未来はないな」と思いますよね。

もし言うのであれば、 「会社の将来を考えて内部留保を増やしたいが、君たちへの分配はそれ以上に優先度が高い。だからこれからも頑張ろう」 この辺までセットで言わないと、スタッフは「自分たちは置いてけぼりか…」と感じてしまいます。

おかげで「もう自分でやるしかない」と、開業への道が私の中で一気に開いたので、今から考えればありがたい薫陶であったかもしれません。 ですが、当時の私からすると、その医院で一生懸命働く事を真剣に考えていましたから、やはりイヤーな感じでしたね。

…すみません、ギャップの話がただの愚痴になりました。

「ギャップがあるぞ」と焚きつけるのが採用コンサルのお仕事。 「褒美を取らすぞ」と威勢よく駒を探すのが大手法人。

もし私がその言葉に乗って転職していたら、今はどうなっていたでしょう。 …とはいえ私は、選んだ道を正解にしようと努力をしたでしょうけれど。

念のために書きますが、私はそういう環境で働き、他もそうであると知り、「それは良くない」と痛感して、今のこの「はつおい歯科室」を作っています。

「人は城、人は石垣、人は堀」 武田信玄の言葉ですが、私は「企業は人なり」だと本気で思っています。 (当時、これを前の院長に言って「は?」みたいなリアクションをされましたが…笑)

ギャップというのは恐ろしいものです。 存在していても気が付かなければ幸せな事もありますが、一度他者との比較が始まると、事実に何一つ変化はなくとも、心の中の溝は永遠に広がってしまいます。 比較から幸せが生まれる事はありません。

ですが、ビジネスの世界では、それを見せないと商売にならないのでしょう。 「あなたは不遇です」「損をしていますよ」「あなたの本当の価値は!」 寝ている人をくすぐって起こして、消費者を「生み出す」のが商売の鉄則なのかもしれません。

「あなたはもっと認められるべきだ!」 この言葉を言われた人は頷くかもしれませんが、他人が話していたら、「怪しい商売に騙されているんじゃ…?」と心配になりますよね。

しかしSNSは繰り返し、色々な形でこの情報を投げ込んできます。 私たちの脳は、その繰り返しに適応しようとして「信じる」「委ねる」を選びがちです。

私は「ビッグファイブ」という性格診断で、「神経症的傾向(不安感や不信感が強い)」が高いタイプです。 ちょっとした目の動きやしぐさ、言葉のタイミングに「どうして?」と永遠と考えてしまう、ある種の病気です(笑)。

なので、真剣に考えてしまうと商談など決して進まないのです。自分も他人も信じられないので…。 だからこそ、仕事をする時はこう決めています。

「この人を信じると決めたのだから、騙されたとしたらそれは自分の責任だ」

そう思える人でないと、仕事が進められないのです。大変ですよ(笑)。

でも不思議と、いつも思うのです。「いい人にばかり巡り合うなぁ」と。 本当は騙されている事もあるのかもしれませんが、「でも、この人が得をするのであれば良い事だ」と思える様な人に出会えるのです。

神経質なのかアホなのか、自分でも分かりませんね。

でも、人の不安を煽って消費を喚起する、あの広告活動には…やはり同意しかねるのですよねぇ。

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