はつおい歯科室 べいちょーです!
むし歯も歯周病も、感染症だってご存知ですか??
この数年で感染症への恐怖と認識、警戒心が高まっています。そんな時だからこそ、歯科医師として気にして頂きたいのがむし歯と歯周病です!
感染症というのは“病原体”が体に影響して起こす諸症状の事を言います。
むし歯も歯周病も、細菌感染が引き起こします。だから“感染症”なんです。
①“むし歯”って何?
②“歯周病”って何?
③“感染症”を避けるには?
出来れば治療なんて受けたくない。
歯科医院に近づきたくない・・・。
そんな方に読んでいただけたら嬉しいです。
①“むし歯”って何?
むし歯は歯が溶かされて欠けたり穴が空いたりする病気です。この欠けや穴を作るのが細菌です。
細菌をはじめとした微生物も生き物です。彼らも生活していて、食べたり・排泄したり・繁殖したりします。
細菌が生活する中で、彼らも自分を守るために保護膜を作ったりして仲間を増やしていきます。
生物にとって砂糖は貴重なエネルギー源です。人も栄養源として砂糖は重要で、脳を動かすには砂糖が必須です。“ケトジェニックダイエット”というのがありますね。脳は栄養として砂糖かケトン体しか使えません。体の中に砂糖が足りなくなると、砂糖の代替物として細胞を壊してケトン体を作り出して脳のエネルギーにします。生物にとって、砂糖は必須なんです。
細菌にとってもそれは同じ。細菌の体は1μm(1/1000㎜)ととても小さく、消化器官もありません。原始的な構造だからこそ砂糖だけを栄養素として取り込みます。
砂糖を摂取した細菌は、体の周りに食べカスを散らかしていきます。それはネバネバしていたり、酸っぱかったり、唾液に抵抗したりします。これも口の中で生き残る、彼らの知恵ですね。
通常、口の中は唾液(ツバ)が全体を覆っています。唾の中には歯を硬くしてくれるカルシウムイオンやリン酸イオン、酸を中和する重炭酸、タンパク質消化を助けるアミラーゼ、潤滑剤の役割をするムチン、抗菌成分のディフェンシンやIgAなど、沢山の成分が入っています。
これらが細菌を減らしてくれたり、傷ついた歯や歯肉を保護・回復させてくれたり、洗い流してくれたりします。
砂糖を食べた細菌は唾液に抵抗するネバネバを出してその中に隠れます。すると唾液の作用が行き届かなくなってしまうのです。また、チョコレートやグミなどは歯に挟まって出てこなかったり、チョコレートは特に油の成分が歯に粘ついて離れません。細菌は自分の出したネバネバで唾液に抵抗して生き残り、チョコレートは粘ついて、継続的に砂糖を細菌に供給します。
細菌が生活する中でネバネバの他に出すのが“酸”です。この“酸”が歯を溶かす成分です。酸は食べ物や飲み物にも溢れていて、お酢や酸っぱい食べ物、炭酸水や炭酸の飲料水、お酒なども酸性です。でも「酢豚が好きでむし歯になった」なんて聞いたことないですよね?これは酸に触れただけでは歯に穴が空いたりはしないからです。表面は酸に影響はされますが、唾液がこれを回復してくれて“再石灰化”してくれます。しかし、再石灰化を超える量の酸や、その作用時間を与えてしまうと歯も溶かされてしまいます。“酸蝕症”と言います。
唾液に抵抗した細菌達が、長時間居座って、そこに継続的に砂糖が供給されると、酸が継続的に作られて、歯も長い時間 酸に晒されます。細菌は増殖も早くどんどん増殖するので酸の量も増えていきます。
長時間 歯が酸に晒されると構造が崩れて歯に穴が開き始めます。奥まで酸が浸透すると穴が空いたり茶色くなったり黒くなったり。空いた穴にまた細菌が入り込んで増殖して酸を出して穴を広げていきます。すると“欠けた”“穴が空いた”状態になります。細菌は小さいですから、ほんの小さな穴も住み心地のいい窪みになります。またそうなると歯ブラシも届かなくなっていきます。
ニューブランという先生が提唱するのは“4つの輪”です。
むし歯を作るために必要な4要素です。これが重なるとむし歯が作られます。ですので、
この中の1つでもなくなれば虫歯にならない、というものです。
これを元に『甘いものを食べない(砂糖)』『毎日歯を磨きましょう(細菌・時間)』『ダラダラ食べしない(時間)』『フッ素を塗ろう(口の環境)』などのむし歯予防法が考えられています。
②“歯周病”って何?
歯周病は歯の周りに炎症を引き起こす病気です。炎症の結果、色々な症状が起こります。また、歯周病は慢性疾患に分類されて、自覚症状はほとんどありません。名前の通り歯の周りの病気になります。
歯は、骨と歯肉に支えられて植立しています。
歯周組織には歯槽骨・歯根膜・セメント質・歯肉の4つの組織があります。
この歯周組織が破壊されるのが歯周病です。中でも歯槽骨(歯を支える骨)がとけると元通りには戻りません。
なので、可能な限り早い段階で発見して進行を食い止める必要があります。
歯周病も細菌が引き起こす感染症。
細菌が歯の周りで増殖することで歯茎を傷つけて炎症を引き起こします。
歯周病は細菌が作る「歯石」が悪さをします。歯石って、実は細菌の塊なんです!!
歯の汚れを「プラーク」と言いますが、このプラークの約14%を細菌が占めていると言われています。
この細菌がプラーク内で凝集して、ミネラル分を取り込んで硬くなっていき、“歯石”を形成していきます。
細菌がプラークを作り出すのに半日から1日程度と言われています。またプラークは、2日ほどで石灰化を始めると言われています。目に見える大きさの歯石は2週間ほどで形成されるそうです。ですので、目に見える歯石がある場合、そこが2週間も磨けていなかった可能性があります・・・!
プラークも歯石も、はじめは本当に小さいものです。それがより集まって目に見える大きさになり、更に集まって、その上に重なって、プラークと歯石が形成されます。歯石は歯にこびり着いて取れず、歯石の表面はザラザラなので更に汚れが着きやすく取れにくい状態にしていきます。
歯石は歯ブラシでは取れないので歯科医院でのクリーニングが必要になります。
歯石を取らないと歯石はどんどん大きくなってきます。歯周病の原因菌は、実は空気が苦手で“嫌気性菌”と言います。やがて細菌達は“歯周ポケット”に逃げ込みます。細菌達はやはり生活をしていて、代謝の結果として毒素を出しています。この毒素によって、歯肉に炎症を引き起こします。歯肉に炎症が起こると歯茎が傷つき、出血が起こります。血液というのは人の体を維持している栄養源です。大きな体を支えているほどの栄養を含んでいる血液は、細菌達にとっても栄養満点です。血液で栄養補給した細菌達は更に増殖して増え、歯石を歯周ポケットの中でも形成していきます。
炎症によって歯肉と歯槽骨が溶けていき、“歯茎が痩せた”状態や“歯を磨くと出血する”状態を作り出します。また、炎症が起こると歯肉の代謝が激しくなり、体でいう“垢”がたくさん出る状態になります。その結果“口臭が気になる”状態になります。
歯周組織が破壊されると、歯は支えを失って、揺れ始めたり、抜けてしまったりします。
揺れる頃には重度の歯周病ですが、この頃になって初めて、「揺れて痛い」「血が出る」などの自覚症状が出ることがあります。それほど、歯周病は無自覚に進行します。
また歯周病が心臓疾患や脳血管疾患、認知症などに関わるという研究が進んでいます。
歯の健診を義務付けようという動きも、検査をしないと見つからない疾患である事があるかもしれません。
癌なども検診で受けてみないと見つからないことがあります。また見つかった頃には手遅れ、という状態が起こらないように、色々な方策がなされていますね。歯周病やむし歯のリスクも他の疾患につながる意味で、重視されているのでしょう。
毎日の歯磨き、定期的な検査と清掃が、歯周病だけでなく全身の病気や生活の満足度、認知症などのリスクをも下げられる、と思って、通っていただけると嬉しいです。
③『感染症』を避けるには?
ここまで読んでいただいてありがとうございます。読んでいただいた方なら、もしかしたら読む前から、分かっていたかもしれません。
口の感染症を避けるには、毎日の歯磨きです!!
むし歯や歯周病を引き起こす細菌は残念ながら皆さんの口の中に存在しています。ある意味、すでに感染している状態とも言えるかもしれません。
それを発症させないために、細菌数をコントロールするために、歯磨きなんです。
細菌が増える前に歯磨き、プラークができる前に歯磨き、歯石ができる前に歯磨き なんです!
そして、繰り返してしまいますが、むし歯も歯周病も感染症です。つまり、感染します。
家族で、職場で、恋人との間で、感染するんです。
つまり歯周病予防は、周囲の人のためにも必要なんです。
特に母親から子どもへの母子感染や、保母さんや学校の先生などから子どもへ、また家族で飼っているペットを介して祖父母から子どもへなど、身近な人への感染は防ぎたいですよね。
歯科医院では歯ブラシの指導や食習慣の指導、相談も受けてもらえます。
通ってもいただきたいですが、何よりもご自身で磨けることが大切です。
それでも歯石はついてしまうものですので、大切なひとの為にも、定期検診で通っていただけると嬉しいです。