歯ぎしり 〜最恐習慣〜

歯ぎしり 〜最恐習慣〜

2023年5月14日

はつおい歯科室 べいちょーです!

歯ぎしりってご存じですか?上下の歯を噛み締めて擦り合わせる習慣性の行動です。
○力強く噛んで顎を左右に動かす“グラインディング(歯ぎしり)”
○顎を動かさない“クレンチング(くいしばり)”
○カチカチ噛み合わせる“タッピング
これらを“歯ぎしり”と呼んでいます。
“ブラキシズム”とも言います。

〜最恐習慣〜 などと物々しい言葉を作ってみましたが、何が恐ろしいのか。
今回は恐るべき 歯ぎしり について書いていきます 。

①“歯ぎしり”は 何が起きているのか
②“歯ぎしり”で 何が起きるのか
③“歯ぎしり”を 止めるには

①“歯ぎしり”は 何が起きているのか
“歯ぎしり”は強い力で噛み合う事、が起きています。
どれくらい強いのかというと、約90kgの力が出ているとも。ではそれはどれくらいなんでしょう。普段の噛む力で出せるのは60kgくらいと言われています。厚いステーキを噛み切る時やフランスパンを食べる時など、食習慣にもよりますが、この時に出す力が60kgくらいです。
“歯ぎしり”が90kgとすると、1.5倍の力が出ているんですね。
しかし!!これだけではありません。歯ぎしりは睡眠時に『長時間』『継続的に』『連日』繰り返されます。食べる力の1.5倍の力で、寝ている間に繰り返されるのが“歯ぎしり”です。
1.5倍というと「そんなに凄くないのでは」と思うかもしれませんが、想像してみてください。
90kgのダンベルを、毎日何時間もの間、連日使い続けたら・・・。だいぶ筋肉がつきそうじゃないですか?そして、体を痛めそうじゃないですか?
しかも歯は筋肉や骨と違って新陳代謝が起こりません。一度削れると戻ることがないんです。歯は焼物のお茶碗に似た「エナメル質」が素材です。体の中で最も硬く、化石でも歯の出土が一番多いんですよ。
そんな硬い「エナメル質」同士が連日、長時間、強い力で擦れ合います。
川にある石は丸いですよね。あれは元々は四角く角張った石が、互いに擦れ合って角を丸めて小さくなっていきます。それが繰り返されて河口へ運ばれ、海に出て波に揉まれて、陸に戻ってくると、砂ができます。地球は長い年月休みなくコレを繰り返して砂浜を作りますよね。
歯も毎日の“歯ぎしり”で歯を削っていってしまいます。

②“歯ぎしり”で 何が起きるのか
“歯ぎしり”では歯と歯が擦れ合って歯を削り、「エナメル質」を壊していきます。これは直ぐに起こる物ではありません。大抵は習慣的に行われる“歯ぎしり”とその他の習慣で破壊が助長されて、長年かけてゆっくり進行します。
はじめは歯が平らになって凹凸が減ってきます。これに、むし歯や酸摂取の習慣が加わったり、角が欠けてきたりして進行していきます。噛む(咬合する)ことで摩耗するため「咬耗 (こうもう)」と言います。
30代からは、むし歯治療で金属を入れたり、白い被せ物を入れたりする事が多くなります。これらの治療材料は歯よりも硬いので、歯が削れる量が増えてきます。また歯を抜いた場合、歯ぎしりの力(分子)は変わらず負担する歯の本数(分母)が減るので、一本ずつの負担は大きくなっていきます。
30代から蓄積された歯のダメージが50代頃から露見してきます。「しみる」「歯が小さくなってきた」などです。この頃になると「エナメル質」が全て削れてしまい、内部の「象牙質」が露出します。「歯が黄色くなった」という表現もされます。「象牙質は」エナメル質よりも柔らかい素材です。象牙質が露出すると、「咬耗」は一気に進行します。
歯は歯の内側で新しい歯を作っています。エナメル質があるうちは削れても内側で歯を作って守ってくれていますが、エナメル質が削れて象牙質が露出し「咬耗」の進行が速まると、守るより削れる方が勝ってしまい「しみる」症状が現れます。
象牙質の内側には「歯髄 (しずい)」という歯の神経と呼ばれる組織があります。歯髄は神経と呼ばれるのでわかる通り、痛みを感じる組織です。外の刺激が歯髄に届いてしまうくらい、歯髄との距離が近づいて「しみる」ようになります。あるいは「歯髄」が露出して「根管治療」が必要になる場合もあります。
また、歯が噛み締めに耐えきれず、削れるのではなく折れたり割れたりしてしまうことがあります。この場合には治療が困難で抜歯になるケースが殆どです。むし歯でも歯周病でもなくても、です。

③“歯ぎしり”を 止めるには
残念ながら、睡眠時の歯ぎしりをコントロールする事は困難です。なぜそれをするのかも、どういう人がするのかも、よくわかりません。そのため“ナイトガード”や“マウスピース”と呼ばれる装置を使います。歯ぎしり自体を無くすことができないので、歯と歯が擦れ合わないようにするのです。
また“マウスピース”は歯並び全体を覆うように作るので、言わば顎が一体になります。そうすると、部分的な過負担や部分的な接触を避けて、全体で負担する事ができる様になります。
“歯ぎしり”を止める事は困難ですが、減少させる事は出来るそうです。“歯ぎしり”は睡眠の浅い時に起こる事が分かっています。人は睡眠の間、深い眠りと浅い眠りを繰り返しています。ノンレム睡眠とレム睡眠とも言われますね。なので「睡眠の質を向上させる」事が“歯ぎしり”を減らしてくれるようです。
飲酒後の睡眠は睡眠の質を悪くし、睡眠を浅くする事がわかっています。また睡眠前に明るい光が目から入ると寝つきが悪くなり睡眠の質が悪化することがわかっています。「ストレスで歯ぎしりが増える」のも睡眠の質と関わりがあるかもしれません。交感神経が副交感神経を抑制してしまって睡眠を抑え込んで締まった結果として“歯ぎしり”が生じているとも考えられます。
人は明かりに影響を受けて睡眠ホルモン(メラトニン)を出すので、暗い部屋で寝ることが望ましいですね。
また体温が上がった状態から低下することで入眠が早くなると言われていますので、お風呂で体を温めてから寝ることも効果がありそうですね。
睡眠の質をあげる事は歯のためだけでなく身体に、仕事や生活にも良い影響があると思います。

歯ぎしりは自身の歯にも悪影響ですが、パートナーやご家族にも「騒音」として被害があります。私も実は歯ぎしりをするので家族に迷惑をかけています。まだ中学生の頃、別室で寝ていた母が「歯ぎしりがうるさい」と訴えていました。私は中学生の頃から歯ぎしりがひどく、ずっとマウスピースを使っていますが、忘れると直ぐにバレてしまっていました。別室でも「うるさくて寝られない」のが“歯ぎしり”です。
音のしない歯ぎしりもあるので、言われた事がないから歯ぎしりはしていない、という訳ではないので、そこは注意です。

最後に、起きている間に食いしばっている人も多いです。集中している時や、逆にぼーっとしている時に食いしばっている人もいます。また力しごとやトレーニングで「食いしばる」と自覚している方もいらっしゃいます。
TCH(歯の接触習慣)と言って、食いしばらなくても歯は“咬耗”していきます。食時以外では歯と歯が接触しないことが、私たち歯科医師としては推奨するところです。
また「食いしばると力が入る」という迷信があります。漫画などでも「ギリッ」と食いしばって渾身の一撃を・・・!というシーンがありますね。しかし実は、理学的には歯と歯が離れている位置である一定の部分で最も力が入ることが知られています。コンタクトスポーツではない競技でもスポーツ用マウスピースを作る事があります。特にプロの選手は、力の入りやすい顎の位置を計測して、その位置で顎を固定するためにマウスピースを使用したりします。
いずれにせよ、習慣や無意識で食いしばっている方が多くいらっしゃいます。
是非、意識をして、歯を接触しない習慣を獲得していただけると嬉しいです!!

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