はつおい歯科室 べいちょうです。
【仕事】に対する概念って、難しくないですか。 あまりにも人それぞれです。キャリアを積みたい人と、ただお金が欲しい人とでは、見ている世界が全く違います。
西洋の価値観で言えば、労働は「神の与えし罰則であり義務である」と聞いたことがあります。と一括りに語ってみても、日本人の間でも大きな差がある【仕事】観です。
「時間」か「質」か。働く上でのスタンス
【仕事】を、ただお金をもらうための拘束時間のように考える仕事観もあります。 例えばアルバイトで「時給」という言葉があります。「その時間そこに居ればお金を貰えるというシステム」……ではないのですが、実質その様に捉えられている場合もあります。 「やる気を出すと損である」というマインドでおられる方も中にはいらっしゃいます。一方で、やる気を出して社員よりも高いロイヤリティ(貢献心)を持って働いてくださる方もいらっしゃいますね。頑張れば喜んでもらえる、認めてもらえるといった成功体験があるのでしょう。きっとそういう人は、色々な所で活躍できるはずです。
一方で「残業」というものがあります。「残業」とは何かが重要ではありますが、私はこれが少し苦手です。 会社側が見込みを誤って発生する「残業」もあれば、労働者側の問題で時間内に終えられずに発生する「残業」もあります。「今月は残業が少なくて当てが外れた」とこぼす知人もいました。「残業」を「当て」にする文化すらある日本で、「労働時間」ばかりが話題になるのは必然の様にも感じられます。
一方で「労働の質」には、なかなか目が行きにくいのではと思ってしまいます。 将来を見据えて働く人は「質」を考えて努力をしますが、「時間」だけを考えて質を下げる事も厭わないような働き方が増えてしまうことには、少し危機感を持っています。
技術職のジレンマ。技術はどうやって身につくのか
歯科もそうですが、技術職にとって「労働時間の厳格な制限」は、技術向上という面において一つの過酷な壁になります。
歯科治療には技術が必要です。むし歯を削る時にも、どうすればダメージが少ないか、どう削ればきれいに埋まるか、ほぼ全てが技術の積み重ねです。 私は幸い、研修医の時にも勤務医の時にも、延々と練習する事を許容してもらえる環境がありました。診療前に行って練習をして、昼休みも練習、終業後にも練習。休みの日に練習をしに行ったり、研修に行ったりするのも普通でした。当時はそれが自分のための「修行」であり、もちろん残業代がつくような類のものではありませんでした。
しかし、労務管理が厳格化された現代において、これをそのままの形で許容してもらう事は難しいでしょう。時代の変化としては正しいことですが、「新卒で技術もない段階で、練習や自己研鑽の時間をどう担保し、誰がどう責任を持って指導していくのか」という大きな課題が残ります。
近年では、歯科や医療業界でも「退職代行サービス」が使われる事例が増えていると耳にします。指導する側もされる側も、以前のような長期的な信頼関係を築く前に、ある日突然・・・という事も。もちろん、それだけ元の職場環境に何かしらの問題があったのかもしれませんし、真相は当事者にしか分かりません。しかし、こうした労使関係の希薄化の中で、医療の安全を担保する「技術」を一体どうやって次の世代へ繋いでいけばいいのか、頭を抱えてしまう指導者は少なくないはずです。
この「技術継承と労務管理のジレンマ」は、歯科や医療業界だけではありません。美容師さんや、建築関係など、あらゆる技術職が同じような深刻な悩みを抱えていると感じています。仕事観を見つめなおさなくては、社会全体の安全や技術力が大変な事になってしまうと思いませんか。
ギバーとテイカー。私の理想の【仕事】観
【仕事】というと、人によっては否定的な意味であったり、肯定的な意味であったり、全く反対の概念にもなりえます。 もちろん悪質な雇用主がいる事も事実としてありますから、どちらが悪いと言う話ではありません。それでも、例え理想論であったとしても、【仕事】観は人を幸せにする、よいものであってほしいと思います。
私の仕事観は、なんでしょう。 労使関係というのは本来、お互いを尊重し合う「パートナー的なもの」と考えている様な気がします。 持ちつ持たれつ、どちらかだけが得をして、どちらかが損をしてはいけなくて。誠実で真摯な約束が人と人との間にあって、お互いに相手の為に【働く】事が出来れば。理想論かもしれませんが、そう願っています。
テイカー(奪う人)とかギバー(与える人)とかという言葉が一時流行りました。近年「テイカー」が増え、やったもん勝ち、取ったもん勝ち、みたいな風潮を少し感じます。不信感から自己防衛と称して、人を攻撃する事すら正当化されるような生きづらい世の中を、私たち自身で作ってしまっている側面があるのかもしれません。
そんな社会の中でその一員である私が、私の中で平衡を保って、誠実なパートナーシップを築いていくことが自分の中のあるべき姿なのかなと。そんな風に思いながら、自分に出来る事を常に増やしていきたいなぁと。歯科医師としても、雇用主としても、一人の人としても。


