はつおい歯科室 べいちょうです。
先日実施した、口腔生理学の試験の採点を終えました。無事に全員合格という結果になり、心底ホッと安心しつつも、少し別の不安も抱えることになったお話を。
私が教えているのは、浜松歯科衛生士専門学校という学校です。専門学校を卒業して得られるのは、「歯科衛生士の国家試験を受けるための受験資格」という、なかなかに過酷な道への切符です。
暗記の山。基礎科目「口腔生理学」の過酷さ
私が教える口腔生理学は基礎科目であり、とにかく暗記の多い科目です。
例えば、舌にある味蕾(味細胞の集合)を有する組織名とそれを支配する神経の名前、その神経節の部位や分岐点、そして中枢など。一つひとつ正確に憶えていかなくてはいけません。その他にも、舌や口腔、咽喉部の運動神経や反射にまつわるその名前や機序などなど……。 理解するためにはまず名前を憶えて、それぞれの機能を覚えて、神経はその走行や分岐、名前の変化など、「これは憶えてね」と講義中に何回も言って、言っている自分自身でさえ理不尽さを感じたほどです。
たかだか90分×7回の講義で出すべき知識量ではありません。ですが、それ以上の時間をこの科目に割くには、他にも憶える事は山積みなのが、歯科衛生士を目指す学生さんの痛し痒しな所です。
基礎科目というのは難儀なもので、まんべんなく全てが重要です。「ここは憶えなくていいよ」という事がありません。国家試験でどこを問われても文句は言えないからです。 そういう科目って、なかなかやる気を出せませんよね。覚えることが多すぎて、学生の間では「できれば後回しにしたい科目」の筆頭になりがちです。悲しい反面、その気持ちも痛いほど理解できるもどかしさがあります。
166問のテストと、予想外の(?)結果
そんな国家試験を踏まえて、今回の学内試験をどうしたものかと悩みました。
私が学生の頃の試験を引っ張り出したりして、記述式の筆記試験なども考えましたが、筆記試験って得意不得意でどうしても点数が分かれる気がします。それに、国家試験本番はマークシート方式です。 患者さんに口頭で説明する機会もあれば筆記の知識も必要ですが、実際の診療で、私が患者さんに「舌は鼓索神経が味覚を伝えていて……」などとお話したことは未だかつてありません。
と、そんな事を悩み抜いた結果、166問という大量の問題で範囲をまんべんなく出題することにしました。とにかく「しっかり勉強しさえすれば全員100点取れる!」という設定にする事にしたのです。
結果は、私の想定よりも遥かに点数が高く、90点(166問中150問正解)を超える学生さんが殆どという大変素晴らしい成果になりました。
ただ、これが模擬試験などであれば「素晴らしい!」の一言で終わるのですが、学内の定期テストとなると、「ちょっと簡単すぎたかな?」「全員が高得点だと、難易度調整としてはどうだったのだろう」と、テスト作りの奥深さに直面することに。 長年教壇に立たれている本職の先生方というのは、本当に凄いですね。私にはまだ、その辺の絶妙な塩梅が全く分かりません。
点数が良くて嬉しいという気持ちの反面、テスト作りにおいて自分の未熟さを痛感し、勝手に少し不安を抱える事になりました。
ゲシュタルト崩壊との闘い
それにしても、採点と言うのは本当に大変な作業ですね。
同じ様な解答用紙に何枚も何枚も目を通していると、同じ物なのか別の物なのか、だんだん分からなくなってきてしまいます。これが俗に言う「ゲシュタルト崩壊」というやつでしょうか。 〇のはずなのに×に見えたり、その反対も然り。そして「間違えてはいけない」というプレッシャーのせいで採点も過剰に慎重になり……と、何だかとても緊張しました。
この90点以上の素晴らしい知識を、彼女たちが3年生になっても持ち続けていてくれたら嬉しいなと思いつつ。 その頃に、国家試験の復習講義でまた彼女たちにお会いできる事を、今から楽しくも、少しだけ不安に思いながら待つことにします。

