はつおい歯科室 べいちょうです。
記載を加速させつつ、と書きたいところですが少しずつ少しずつ、じわじわと、頑張らせてください。
今回は口腔乾燥です。意外と怖いんです。口腔乾燥症

お口の乾燥
実は口が乾燥している患者さんはたくさんいます。
困っている人もいる一方で、乾燥には困っていない。「けれど」という方も。
現代病とも言われる事がある口腔乾燥症(ドライマウス)ですが、乾燥に困るというよりもその他で困った事が現れます。
私も乾燥に気が付くときは、「あれ、これって・・・」と乾燥とは別の事で気が付くことが。
口腔乾燥症(ドライマウス)で何が起こるのか
口腔乾燥症では口の中が渇きます・・・と当然の事を書きますが、それが問題になります。
口の中は歯と粘膜で保護されています。粘膜は湿潤環境でそのバリア機能を発揮します。実は歯も、湿潤環境でその強度を保っています。乾燥はそれだけでダメージになります。
「歯にダメージが加わった状態」とは何でしょう。
分かりやすいのはむし歯です。細菌が歯にダメージを与えて穴をあけ、破壊します。乾燥はそんなダメージを与えます。根管治療を行った後の歯は割れるリスクが高まると言われています。それはなぜかと言えば、乾燥です。
緑の青々とした木はしなやかで、木登りをしてもびくともしません。
枯れた気は、水分が抜けています。力を加えるとパキッと折れてしまいます。
「粘膜にダメージが加わった状態」とは何でしょう。
分かりやすいのは擦り傷や切り傷ですね。皮が破れて出血します。乾燥が続くと足や手でもひび割れて出血しますよね。口は粘膜なのでもっと乾燥には弱いのです。皮が破れると細菌やウィルスが侵入します。特に口は微生物がたくさん住んでいます。微生物が体の組織を破壊する病気が歯周病です。
《乾燥》という状態の怖さ、ちょっとずつ伝わって来たでしょうか?
乾燥はむし歯と歯周病を作り出すような状態なのです。しかも、それだけではないんです…。
口腔乾燥症(ドライマウス)からの連鎖
口腔乾燥症(ドライマウス)は唾液量の低下で起こります。
唾液には湿潤作用の他、咀嚼を助ける作用や微生物を抑え込む抗菌作用、歯や粘膜を修復する作用、酸性度を調整する作用など、たくさんの役割があります。
細菌への抵抗性の低下
抗菌作用を有する複数の物質が唾液には含まれています。乾燥によって歯と粘膜はダメージを受け、細菌の付着する《足場》は増加します。同時に細菌の繁殖を抑える抗菌物質も行きわたらないので細菌の繁殖は促進されます。加えて、唾液には毒素を希釈する作用もあります。希釈されない細菌由来の物質はダイレクトに歯と粘膜にダメージを与えます。更に、唾液があれば修復される歯と粘膜も、ダメージを受けるばかりで修復に制限がかかります。
同時多発的な重症化のリスク
怖いのは、それが口全体で発生する事です。全部の歯でむし歯と歯周病のリスクが同時に高まります。治療をしても追いつかないうえ、治療したそばから再発してしまう事もあります。加えて、むし歯になる場所が歯の根元に集中する事で歯が折れてしまう場合もあります。
歯が折れると細菌の足場と隠れ家が増えて細菌は増加します。しかも噛む力を負担する歯が減る事で他の歯の負担が増える事にもなり、更にむし歯と歯周病の悪化を助長します。
その他にも
細菌の増加が招くのはむし歯と歯周病だけではありません。
《口臭》は唾液の減少により増加する事が知られています。緊張している時、口呼吸をしている時など、一時的にも増加します。これは細菌の増加によるものです。
《誤嚥性肺炎》も懸念されます。唾液の減少は洗浄作用を低下させて細菌増殖を招きます。ネバネバした唾液が喉に張り付いて、唾液と一緒に気管へと流れやすくなります。
実は自覚がない人も
「最近口が渇いて」と誰もが自覚する訳ではありません。私(歯科医師)や歯科衛生士が口の乾燥に気が付いて口腔乾燥の検査を行うことがあります。基準値以下ですが口が渇きませんか?と聞いても「そんな事ないけどなぁ」と答えられる方が半数程度と感じます。説明をして検査をしてみると基準値以下かギリギリ大丈夫という事が殆ど、という感覚でもあります。
「最近むし歯になりやすくなった」「口臭が気になる様になった」「歯ブラシで血が出る」「歯周病検査で数値が悪化した」などそのサインはたくさんあります。すべてがイコール口腔乾燥症というわけではありませんが、それぞれが口腔内の変化(悪化)のサインですので、まずは歯科医院で相談が必要です。
口腔乾燥症(ドライマウス)の検査
《口腔粘膜湿潤度検査》は保険で行うことが可能です。これまでは数分間ガーゼを噛むなど、やや苦痛を伴うものでしたが新しい機器は3秒程度ベロをだしていただくだけで簡単に結果が分かります。
点数は130点ですから会計時の一部負担金は1割負担の方で130円、3割負担の方で390円です。
唾液量の変化
唾液の量は一日の中で変化します。
例えば酸っぱいものを思い浮かべると唾液の量はそれだけで増加します。食事中には口の中が直接刺激されて唾液が増加します。学生さんは体育の授業やマラソンで口の中がカラカラになってネバネバする感覚があるかもしれません。お仕事をされている方であれば、緊張によって口が渇いて歯に唇が張り付くなんて言う方も珍しくありません。
このように唾液は、その時々によって量と性質が変化します。
一日の中での変化
唾液は活動中に増加して睡眠中に減少するリズムを持っています。特に食事やコミュニケーションによる口の動きに刺激されて増加します。反対に睡眠中には唾液の量が極僅かになります。
唾液にはサラサラした唾液とネバネバした唾液がそれぞれ別々に作られて混ざっています。活動中はサラサラした唾液が増加し、睡眠中にはサラサラ唾液が減少します。
ストレスや緊張時の興奮した状態ではサラサラ唾液が抑えられてネバネバするメカニズムです。「緊張で舌が喉に張り付く」のはこれが原因です。
加齢変化
年を経るにつれ唾液量は減少すると言われています。減少するのはサラサラ唾液でネバネバ唾液の量は大きな変化はありません。だんだんとゆっくり減少しますので、自覚症状は感じられにくく「そういうもの」と考えてしまいがちです。しかし、上述した通り、むし歯と歯周病、口臭や誤嚥性肺炎など、生活に直結する悩みをドミノ倒しのように引き起こすのが口腔乾燥です。「あれ?」と思ったらすぐに相談してみましょう。
口腔乾燥症(ドライマウス)の治療
はつおい歯科室では唾液腺マッサージと漢方の処方を行っています。

マッサージは優しく行ってください。血流改善は非常に効果的ですので、お風呂で体を温めている時にそっと行うと効果的かと思います。
唾液腺マッサージと漢方はどちらも、効果が現れやすく、しかも効果は持続します。「乾燥は感じない」という方でも、口腔乾燥症の予防にマッサージは非常に効果的です。唾液の量がむし歯や歯周病、口臭などにも良い影響を与えられるとしたら、ちょっとだけでもやってみる価値がありそうではありませんか?
全身と口腔乾燥症(ドライマウス)
シェーグレン症候群
唾液腺の細胞が減少してしまうシェーグレン症候群では極度の乾燥が見られます。涙腺にも影響する為ドライアイを併発する事も特徴のひとつです。
ダイアベティス(糖尿病)
多尿症状により水分を失われる《口渇感》が現れます。微細な血管が障害される事で唾液腺の機能も低下すると言われています。
精神疾患やうつ病
それを引き起こす原因となる過度なストレスは交感神経を興奮させてサラサラ唾液が減少します。唾液腺が自律神経によってコントロールされているため強く影響を受けます。
抗ヒスタミン薬
花粉症をはじめとするアレルギーのお薬や総合感冒薬(風邪薬)、鼻炎薬に含まれる抗ヒスタミン薬は抗コリン作用によって口腔乾燥を招きます。
向精神薬・抗うつ薬
その多くが、神経伝達をブロックする抗コリン作用によって強い口渇感(口が渇いているという感覚)を招きます。
高血圧薬の一部
高血圧のお薬と使用される利尿薬や一部のカルシウム拮抗薬は、水分の排泄を促すため口腔乾燥を招くと言われています。
過活動膀胱のお薬
膀胱の筋肉収縮を抑えるお薬は、唾液腺の活動を強力に抑制する事で口腔乾燥を招きます。
睡眠薬・抗不安薬
脳や自律神経の活動を抑制する事で、自律神経に制御されている唾液腺は同時に抑制されて口腔乾燥を招きます。


