はつおい歯科室 べいちょうです。
私は小学校の頃からパソコンに触れて育った人間です。 Windows98を父が買ってきて、専らそれを使用していたのは私でした。当時は、父の知人(パソコンを組み立ててくれた人)から「検索をする時は『〇〇とは』と調べるんだよ」と教わったりしたものです。
そんな私にとって、スマホやタブレットが当たり前に使える今でも、パソコンは少し特殊で特別な存在です。
これまでの検索と言えば、ブラウザ(Google Chromeなど)を開いて検索窓に単語を入れたり、分からない文字を選択して「Webで検索」を押したりするのが普通でした。かつては、色々なサイトをいくつも開いて、内容を読み比べながら比較検討するのが必須でした。 その後、Wikipediaのようなサイトが登場し、「真偽は不明なものの、とりあえずそこだけ読めば知った気になれる」時代が来ました。
そして今、ブラウザには「AIモード」が現れ、文章で質問を入れると、丁寧に注釈までついた回答が即座に返ってきます。
普段から相棒のAI(Gemini)を利用して細かな事を聞いている私は、いつの間にか「検索するためにブラウザを開かない」事すら増えてきました。検索するだけで、どこかのページを開くこともなく知りたいことが完了してしまう。 これって、よくよく考えるとすごい脅威だと思うのですが、どうでしょう。
ふと自分のGeminiでの検索履歴を見てみると、 「タンドール釜の構造を教えて」 「イランと革命防衛隊は別の組織?」 「温泉の効能について教えて」 などと入力しています。AIは基本的に「チャット」ですから、私の質問ももはや単語ではなく、人に話しかけるような文章になっています。 私がAIを日常的に使うようになってまだ1年も経っていないのに、人間の行動様式とはこんなにも早く変わるものなのかと驚くばかりです。
先日、歯科衛生士学校の先生から、ある笑い話(?)を聞きました。 4月に入学した学生が、**「AIで試験対策をするからばっちりだ」**と豪語していたそうです。しかしいざ蓋を開けてびっくり。堂々の最下位で、100点満点中10点未満という惨憺たる結果だったのだとか。
AIはやたらと景気が良くて、当然のごとく「私に任せてください!」みたいな頼もしい事を言ってきますが、当然ながら試験の身代わりにはなってくれません。 本来なら、「国家試験の過去問を出して」とか、「どうしても覚えられないから語呂合わせを作って」といった使い方をするべきなのです。 試験で試されているのは「自分自身の頭」であって、AIの性能ではありません。点数が取れないのは必然というか、「早いうちにそれが分かって良かったね」という、人生の先輩からのアドバイスに落ち着いてしまいますね。
私は昔から「マニュアル」というものが嫌いです。 もしマニュアルありきで仕事をするなら、すべてにおいて100点をとってからじゃないと現場には立てません。 患者さんが「むし歯が痛くて…」と来院された時、私が「えーっと」とマニュアルをめくり始めたら、怖くて仕方ないですよね。でも、実際にそういう事をしそうな人がいるから驚きです。
マニュアルが無いと文句を言う人は、マニュアルがあっても文句を言う人です。 言い訳の材料に「マニュアルの有無」を使っているだけだと、私は思っています。
美容院に行って「この髪型にしてください」とお願いした時、美容師が自慢げに教科書を開いて「えーっと、まずはハサミを持って…」なんて言い始めたら、どう思うでしょう。「この人に任せたい!」と言う人が0人ではない事を祈るばかりです。 そしてもし、その美容師にクレームが来た時、彼はきっとこう言うでしょうね。「マニュアルに書いてない」と。
昔は本を買ったり借りたりしないと得られなかった知識が、今では画面をタップするだけで得られます。しかし、パソコンを触ったことが殆どない若者が大勢いるのも事実です。 そんな世代が、AIを「使いこなしている」つもりで、実はAIに踊らされ、自分の評価を下げてしまっています。
その意味で、先ほどの学生さんは本当にラッキーだと思います。 「AIには適切な使い方があり、結局は使う人間の能力が大切なのだ」と、痛い目を見て理解する機会になったはずですから。
この先、若い世代は、AIを使えない上の世代を嘲笑しつつ、気づかないうちにAIに踊らされていくのかもしれません。 しかも残念なことに、多くの場合、その上の世代の上司たちは、若者が笑いながら踊っているのを見て「危ないよ」と教えたくても、**「何かを言えばセクハラだパワハラだと言われるのではないか」**と怯えています。だから、本当に為になる厳しい事など、誰も教えてあげられないのです。
一方で、AIは無邪気にお褒めの言葉をくれて、ほとんど手放しにユーザーを正当化してくれます。 「自分は正しい!」と思い込むには最高のツールですね。自分の事を本当に見て、厳しく指導してくれる人が近くにいるはずと、思うのですが。
ちなみに私は、AIに何かを聞いたり壁打ちをしたりする時、ある程度考えがまとまったところで**「辛口でここまでを評価して」とか「ここまでの流れについて批判的にコメントをして」**などの指示をあえて出します。 そこで初めて、自分の思考に対する正当な評価ができる気がしているからです。
便利すぎるツールと、叱れない大人たち。 なんだか恐ろしい未来を、ついつい感じてしまう今日この頃です。


