マウスピース、よく薦められます…。

マウスピース、よく薦められます…。

はつおい歯科室 べいちょうです。

睡眠時の マウスピース について 、患者さんにお話しすることがあります。
「よく薦められます…。」といった答えが返ってくることが珍しくありません。
歯科医師にとってそれほど噛み合わせが恐いんです。
今回は睡眠時のマウスピースがなぜ必要なのか、改めて書いていこうと思います。

①おさらい「はぎしり」とは
②マウスピースの役割
③歯科医師が歯ぎしりを恐れる理由
④お願い、マウスピース着けて!!
○斯く言う私ですが…。
そんな感じで書いていこうと思います。では、どうぞ!

①おさらい「はぎしり」とは
歯ぎしりとは」と検索すると厚生労働省「e-ヘルスネット」がヒットしました。
抜粋すると『主に寝ている間か無意識のうちに、強い力で歯と歯を摺り合わせて音をたてることでした。現在では、覚醒時のさまざまな動作も含めて「歯ぎしり(歯軋り)」と呼ばれることが多くなりました。
との事です。歯と歯が接触する事による様々な動作を「歯ぎしり」に含む様になっているようです。
※たった今この記事を書いていて、食い縛っていました…汗 これも歯ぎしりで『クレンチング』という動作です。
コチラ(過去の記事『歯ぎしり ~最恐習慣』)もご参照頂けると嬉しいです。

②マウスピースの役割
いくつかあるので一度まとめてみます。今回は睡眠時のマウスピースについての記載です。

0.歯と歯の間でクッションになります。
1.歯のすり減り(噛み合わせの変化)を防ぎます。
2.歯を繋げて負担を軽減します。
3.歯と詰め物、被せ物を保護します。
4.痛み(知覚過敏症や歯根膜炎)を抑える。
こんなところかと思います。詳しく書いていきますね。

0.歯と歯のクッションになります。
歯と歯が直接当たるのを防ぐのがマウスピースの最も大切な役割 になります。
上下の歯の間に介在してくれるので、歯と歯が直接かみ合わなくなります。
歯よりも柔らかい素材ですので、歯が削れたり折れたりする心配を減らしてくれます。
歯の代わりにマウスピースが歯と噛みあって、歯の身代わりになってくれます。

1.歯のすり減り(噛み合わせの変化)を防ぎます。
歯ぎしりでは歯と歯が直接削り合って、どんどん歯がすり減っていきます。特にエナメル質内側の象牙質が露出すると、摩耗は顕著に進行していきます。
歯がすり減ると噛み合わせる位置がどんどん変化し、さらに歯をすり減らしていきます。
歯がすり減ると、顎の骨の位置がどんどん近づいていくのが想像できますでしょうか?
歯の高さが減り、どんどん深く噛むようになるイメージです。すると顎周囲の筋肉が無理な動きをして痛みを出したりします。
(過去の記事『片頭痛は噛み合わせで起こる?』『噛み合わせの変化について』も併せてごらんください。)
マウスピースを装着することで歯のすり減りを抑えてくれます。結果的に噛み合わせの変化を防いでくれるので、歯ぎしりに関連して起こる様々な不調を予防してくれます。

2.歯を繋げて負担を軽減します。
重要な役割として、一つの装置で全体を覆う事も挙げられます。歯はそれぞれに特徴が違い、治療歴も違うので負担が均一ではありません。そして、耐久力も不均一です。歯を失うとブリッジという治療をしたりしますが、その場合には負担が増えます。ブリッジは失た部分を他の歯で補う「補綴」という処置です。失った分、土台の歯に負担が増える事になります。
一方、歯を失っても顎の力は減りません。歯への負担は単純に計算すると(噛む力)(歯の本数)になるので、分母である歯の本数が減る事は、歯の負担増になる事が分かります。
マウスピースは全体を繋ぐ装置として機能するので、負担を均等に分散させる役割も持ちます。弱い歯を強い歯が補えるようになります。歯の負担は上の様に単純な計算ではなく、噛み合わせや噛み癖によっても偏りが起こります。それを補正してくれるのもマウスピースの役割です。

3.歯と詰め物、被せ物を保護します。
詰め物や被せ物は、歯に接着して装着しています。強い噛み合わせや無理な負荷がかかると、接着部が外れたり、物が欠けたりしてしまいます。特に白い詰め物は、金属と比べると柔軟性に欠けて割れやすいものがあります。詰め物が欠ければ治せば…と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、欠けた分歯の強度も減るのでより大きく欠けてしまう場合も珍しくありません。
また、材料を選ばずに使われている場合、歯よりも硬い材料を使ってしまう場合があります。この場合、相対する歯や詰め物の周りなどがみるみる削れていく場合もあります。
マウスピースは歯と歯の間に入ってくれるので、お互いの事を保護してくれます。

4.痛み(知覚過敏症や歯根膜炎)を抑える。
歯が噛みあうと、①噛みあう部分 ②歯ぐきとの境目 ③歯の根 ④歯の周り の4つで衝撃を受け止めます。
そして、過大な力はこの4か所にダメージを与えます。
歯へのダメージは欠ける、という形で現れます。歯の根の先には神経の出入り口があり、こちらへのダメージは神経のダメージにもつながります。
歯が欠けると、歯の中央部の神経と外側が近くなり、刺激が伝わりやすくなります。また神経にダメージが行くと小さな炎症を起こして「痛み閾値」を下げます。つまり痛みを感じやすくなります。この結果「知覚過敏」を引き起こします。外と神経が近づいて刺激が伝わりやすくなり、痛み閾値の低下で痛みを感じやすくなると、感覚が過敏になって水や風、噛みあう事で痛みを覚える様になります。
また噛む力で歯の周りが押しつぶされると歯を支えている「歯根膜」で炎症が起こります。この「歯根膜炎」は急に噛むと痛くなる、ちょっと当たっただけで激痛が起こる、という物です。痛みをなくすにはかみ合わせをなくさなくてはいけないので、場合によっては健康な歯を削らないといけなくなってしまいます。
マウスピースが上記の1~3の役割を果たすことで、この痛みを抑えたり予防したりすることが出来ます。

③歯科医師が歯ぎしりを恐れる理由
歯ぎしりがあると詰め物が取れたり壊れたり、被せ物が割れたり、歯が割れてしまったり。とにかく予期せぬ不具合が多いんです。しかも削れてしまった歯は戻ってきません。歯が削れると歯の高さが減ります。高さが減ると詰め物や被せ物を入れられる場所が減ります。接着剤でつけている詰め物・被せ物は、接着面積が非常に大切です。面積が減るとすぐに外れてしまいます。また歯の高さがないと、入れ歯を入れるスペースもありません。「クリアランス」と言いますが、詰め物や被せ物を入れる隙間を確保したいのに、高さが無くて入れられない、入れても薄いのですぐに割れてしまったり取れてしまったりする。そんな不具合がついて回るんです。
最終的にどうするのかというと、歯を全部削って全部に被せ物をつけたりします。全部につけることで全体の高さを上げて元の「顎位(顎の位置)」の回復を行います。歯ぎしりで仮歯も割れやすいので、とても難しい治療になります。削る数も量も多いので、患者さんにとってももちろん大きな負担です。
治療が大変なだけで、そこは頑張ってよ!と思うかもしれませんが、不具合を日常から抱えるのは患者さんご本人です。そして、歯科医師はそういった不具合で苦しむ方をたくさん見ているので、歯ぎしりを恐れているんです。
だから・・・

④お願い、マウスピース着けて!!
歯が欠けるのは嫌ですよね。割れてしまうと抜かなくてはいけない事もあるんですよ。抜いてしまうと、また被害が増えていくんですよ。連鎖していってしまうんです。あまり説明を受けず、何かのセールスの様に「マウスピースを」と言われてきたのかと思います。患者さんの顔から「またその話ですか?」みたいな視線を感じる事も珍しくありません。しかし、どうかお願い、マウスピース着けて!
歯ぎしりの不具合は、後から色々な不具合を引き連れてやってきます。しかも取り戻すのは本当に大変です。出来る限り早い段階から、マウスピース着けて頂けると安心です。


斯く言う私ですが…。高校生の頃からマウスピースを着けています。歯ぎしりが酷いからです。歯が削れて知覚過敏にも悩みますし、顎が痛くて硬いものを食べるのが痛くて痛くて仕方ありません。歯ぎしりは騒音で家族も悩ませます。私は起きている時も気が付くと噛みしめているので、なかなか治りません。マウスピースを着けてもこれですが、着けないともっとひどいです。頭も首も痛くなりますし、歯ぎしりに気が付いて起きたりします。顎の痛みで起きたこともあります。うどんが痛くて噛めない事もありました。ほんとに酷いんです。私はそこまででは…と思われるかもしれませんが、毎日の積み重ねが高齢になった時に襲ってきます。どうかどうか、使って頂きたいと思います。

※注意※
柔らかいマウスピースを使われている方がいらっしゃいますが、私が患者さんから聞いた限りで歯ぎしりが悪化した方が多くいらっしゃいました。私としては硬いマウスピースの使用を推奨しています。
市販のマウスピースはすべて柔らかいタイプですので、申し訳ありませんがお薦めできません。
ちなみに私も柔らかいタイプで悪化しましたし、1週間もせずに穴が空きました。

最後までお読みいただいてありがとうございました。
最後がお願いで何だか変な記事になってしまいましたが、それほど歯ぎしりが元凶の不具合が多いんです。
私自身がたくさんのマウスピースを使って来ていますので、一通りの経験談は語れるかと思います。
是非とも、なんとか説得されて頂いて、マウスピースを使って頂ければと思います。

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