はつおい歯科室 べいちょうです。
実は最近、当院で行っている「ビムラー矯正」を、私自身も本格的に始める事にしました。
取り外し式の「N-Bimler(ビムラー本体)」は自分で作って夜間に装着していたのですが、先日、もう一つの重要なパーツである「NeO-Cap(ネオキャップ)」という装置を自分の歯に装着いたしました。 これは、噛み合わせの高さを上げつつ、他の歯が生える隙間(萌出余地)を作ったり、噛み合わせを再構成したりするための「被せ物」のような装置です。
……これがもう、なんとも噛みにくいのです。
通常のワイヤー矯正であれば、装置をつけてから「じわじわと噛みにくくなって、完了手前でまた噛めるようになる」という段階を踏みます。しかしこのNeO-Capは、装着したその瞬間から突然噛めなくなるので、非常に戸惑っています。 今までは28本(上顎14本・下顎14本)の歯全体で噛んでいたのが、今はたったの8本(上顎4本・下顎4本)でしか噛めなくなりました。咀嚼効率は一気に1/3以下です。
私は元々食べるのが速く、ほとんど飲み込むように食べるという、歯科医師的にどう見ても「悪い癖」を持っています。とは言え、咀嚼がうまく行かないとこんなにも大変なのかと、身をもって驚いています。
実際に装置をつけてみて、以下のような事に気が付きました。
- ①「普段どうやって噛んでいたっけ?」と分からなくなる 普段のつもりで噛み込んでも、そこに接触する歯がありません。いくら顎を動かしても、咀嚼がまったく上手くいかないのです。
- ②「食べ物がうまく運べない」と混乱する これは歯科医師だから気が付く事かもしれませんが、人は「ベロ(舌)」を上手に動かして食べ物を右へ左へ、前へ後ろへと運びながら咀嚼します。しかし、噛み合わせの高さが上がると「口の中の天井の位置」が変わるため、ベロが普段通りに動いても届かず、食べ物をうまくコントロールできないのです。
- ③「食事ってこんなに疲れるんだ」と箸を置きそうになる 何度噛んでも咀嚼できている実感がなく、食べ物がそのまま口の中でゴロゴロ転がっているような感覚です。顎もベロも疲れ果ててしまいます。
人は、小さい頃からの長い学習の積み重ねで、「この硬さならこの力で噛む」「この柔らかさならこれくらいで飲み込める」という事を、無意識に(何も考えずに)出来るようになっています。 それがたった数分で根底から覆され、口の中が大混乱している訳ですね。
しかし、ここで一つ重要な注釈を入れておきます。 実は、この「食べにくさ」こそが極めて大切なのです。
噛みにくいからこそ、咀嚼回数が増える。食べ物を運ぼうと、舌を大きく動かす。閉じにくい唇を意識してしっかり閉じる。 これらの機能が強制的に活性化されることで、自然な歯列矯正を促していくのがビムラー矯正です。これが**「筋機能矯正」の特大のメリット**と言えます。 今のこの苦労も、将来私が高齢世代になった時の「誤嚥性肺炎の予防」に繋がると考えれば、決して無駄ではありません。
今回、自らこの不自由さを味わったことで、「新しく作った入れ歯を入れた患者さん」のストレスが、より明確に理解できた気がします。 食べにくい、しゃべりにくい、とにかく疲れる。検査上は完璧で良好な「新しい入れ歯」よりも、多少壊れていて医学上は”悪い”状態であっても、ご本人にとって**「使い慣れた古い入れ歯」が一番良い**と言われる理由が、痛いほどよく分かりました。
一方、矯正を行うメインの層である子どもたちはと言うと、そもそも乳歯が抜けたり奥歯が増えたりとお口の中が発展途上なため、私たち大人よりも格段に速く慣れてくれます。 しかし、いくら慣れるのが速いと言っても、違和感は違和感です。「うまくしゃべれない」「今まで通りに食べられない」というストレスは必ずあります。それでも、将来得られる利益が大きいと考えるからこそ、そのデメリットを受け入れて頑張ってくれているのですよね。
さて、今回のタイトルにある**「矯正で強制的に」**についてですが。
私は普段から食べる量が凄く多いのですが、この矯正装置をつけてからというもの、食べる量が「一般成人並み」に落ち着いている気がします。咀嚼回数が多すぎて、すぐにお腹がいっぱいになってしまうようです。顎もベロも疲労困憊です。
さらに、しばらくの間は私の**「お疲れさまでした」という挨拶が、「お疲れはまでした」**と聞こえてしまう仕様になっております。
咀嚼の疲れで食べる量が減り、これで「強制」的にダイエットにならないかな……と少し期待したのですが。 よくよく考えたら、食べる量が減ってようやく「普通の成人の量」を食べているだけなので、痩せるのはなんだか難しそうですねぇ(笑)


