知られざる歯科業界の危機。浜松の予防医療と、私たち雇用者の責任

知られざる歯科業界の危機。浜松の予防医療と、私たち雇用者の責任

はつおい歯科室 べいちょうです。

職業の認知って、なかなか難しいものです。 仕事には、普段から見かける事が出来るお仕事と、そうでないお仕事があります。

コンビニの店員さんや飲食店の店員さん、運送会社や郵便局の配送や受付をしてくださる方。学校の先生や習い事の先生などもそうですね。 しかし、世の中には目に見えるお仕事と、そうでない仕事がたくさんあります。

例えばコンビニでは、レジの方以外にも、品出しや棚の整理をしている方、発注やシフトの管理、配送や本部業務など、数え切れないほどたくさんの人が関わっています。私たちが普段目にしているのは、その代表者としての「レジで売ってくれる店員さん」というだけです。 私はコンビニで働いたことが無いので想像でしかないのですが、想像するだけでもこんなにたくさんの人が関わっています。それを子どもの頃に想像できていたかと言うと、全く出来ていませんでした。

候補に挙がりにくい歯科業界

中学生や高校生になると、「仕事」について考える機会が増えていきます。「就職」というイベントが控えているからです。

そして、そのイベントでどうしても候補に挙がりにくいのが、私たちのいる歯科業界です。

医科で言えば、ドラマや漫画、小説になったりする事も多いですから、医師・看護師・薬剤師・放射線技師など、知っている人が多いお仕事です。関連して理学療法士や作業療法士、言語聴覚士なども、病院で働く人として調べて知りやすい職業だと思います。

一方、歯科で言うと、「歯科医師」「歯科衛生士」「歯科技工士」が主たる職業ですが、おそらく殆どの中高生が詳しく知らない職業の可能性があります。 見慣れているはずの歯科衛生士ですら、大人でも正確な認知度は低いかもしれません。歯科技工士に至っては、よほどのきっかけが無ければ生涯知らずに過ごしてしまう職業かもしれません。

しかし、そういった仕事が地域の医療を支えている事を知ってほしいなぁという思いです。

数字が示す深刻な高齢化と人材不足

例えば、歯科医師の平均年齢は54歳だそうです。50歳以上が全体の55%を超える様です。 歯科衛生士の就業率は46%。また、正職員が60%、パートが40%の様です。 歯科技工士の過半数が45歳以上で、20代に至ってはわずか10%程度だとか。 さらに驚きなのは、歯科技工士の就業率(資格を取り、歯科技工士として働いている割合)は25%の様です。

歯科業界には、極端な偏りがありますね。

浜松市の歯科医院は400施設くらいだそうです。 単純に考えると、半分の200施設がこの先20年で「高齢化」を理由に閉業する可能性が高いと言えます。

浜松にとって危険な事は、市内に歯科医師を育てる大学も、歯科技工士を育てる学校も無いことです。 歯科衛生士を育成する学校は2校ありますが、先ほどの「就業率46%」と「その4割がパート」である事を考慮すると、卒業生の27%だけがフルタイムで仕事をしている計算になります。 浜松市の歯科衛生士資格の合格者は毎年70人程度かと思われますので、その27%となると「28〜29人」が、フルタイムで新たに働く人が増える数です。 退職などで減る人数を計算に入れていませんし、おおざっぱにも程がある計算ですが、数字上ではそういう事になっています。

国の方針は予防医療へと向かっているというのに、このままでは将来「浜松市では歯の予防医療は受けられない」という事にもなりかねません。 由々しき事態が想定内である事、恐ろしいですよね。

3日で退職してしまった新人衛生士

しかし一方で、先日こんな話を聞きました。 歯科衛生士学校を今年4月に卒業して資格を取った方が、3日間勤務した後に退職して、今は飲食店で働いているそうです。

歯科衛生士の資格を持っていれば、また歯科衛生士の仕事は出来るはずですが、彼女にとってそれは心理的に困難になってしまったと思います。

その歯科衛生士さんが悪いのではないと思います。たぶん、就職した医院との相性もあったでしょうし、言い始めるときりがありません。 しかし、歯科業界全体にそんな悠長な事をしている余裕はないと思うのです。私がまだ40代にこれからなる様な若僧だから、こんな事が言えるのでしょうか。3年間、専門学校で苦しい思いをして学んだ結果が、たったの3日間で測れるとは思えません。 なんだかそんな事が、日本の全ての業界で起こっている様子で、不安になってしまいます。

雇用する側の責任として

でも一方で、明るく働いてくれる方がその殆どだという事は、決して忘れてはいけません。

歯科医師会を通して、卒業と資格試験に携わった者としては、「全員に希望ある未来を見せてあげたかったな」という後悔がありながらも、一生懸命働いて、泣く事も笑う事も出来ている方々がたくさんいる事は、本当に素敵で素晴らしい事です。

彼女たちに明るい未来を見せてあげられるのは、雇用した歯科医師だけです。
私はそうありたいと思います。

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