はつおい歯科室 べいちょうです。
世の中のありとあらゆる物には「価値」がありますが、私たちは時々、その価値について大きな勘違いを起こしてしまう事があります。
例えば、歯科医師向けの「セミナー」のお話です。
新しい治療法を学ぶセミナーは、新しい機械や薬剤を使用するため、受講に数十万円かかる事が殆どです。 しかし時に、1万円以下だったり、中には「無料」で開催されるセミナーもあったりします。
少し考えれば、それは**「新しい治療法(機材)のプロモーション(広告)」**を兼ねているから安いのだと、簡単に予想がつきます。 しかし、そんな親切なセミナーに対して、後からクレームをつける人がいるのです。
- 「1万円も払ったのに、特定の商品の宣伝をされた!」
- 「無料だから来たのに、道具の営業をされた!」
……ちょっと待ってください。 そのセミナー、数千円の豪華なお弁当と飲み物までついていたりするんですよ? それなのに、主催者に文句を言うのです。
もし私が講師をする側だったとしたら、逆に「無料である事」の方にクレームを言うでしょうね。 その日の為に時間を作り、発表内容を考え、スライドを作り込む。専門領域の経験と知識という「財産」を教えるわけです。 そこへ昼食まで用意して文句を言われて、**「生徒にお金を払う時代ですかねぇ」**と捻くれてしまいそうです。
どこかで、大きな勘違いが起きているのでしょうね。
勘違いといえば、以前の勤務医時代のことです。
休診日に私が一人で練習をしていると、自動ドアをガンガン!と激しく叩く音がしました。 急患でも来たのかと慌てて対応すると、そこには道を大きくはみ出して高級車を斜めづけした男性が立っていました。
「トイレを貸してくれ」
そう言うのです。 「本日は休診日ですので、お引き取り下さい」と丁寧にお断りすると、その男性はこう凄んできました。
「俺は患者だぞ!」
私は**「ありがとうございます。」**とだけ言って、静かに扉を閉めました。
「お客様は神様です」と、今でも本気で言う人は生き残っているのでしょうか。 店員に土下座を強要するような事件が社会問題になり、「お客様は神様ではない」という認識が広まったように思いますが、これも元はと言えば勘違いから生まれているように思います。
日本はアニミズム(自然崇拝)の国で、「色々な所や物に精霊(神様)が宿っている」と何となく感じて生きています。しかし、信仰の明確な経典はありません。
もしかしたら、昔の日本の神様は温厚で、本当に神様のように振る舞う立派な「お客様」が多かったのかもしれません。 だとしたら、現代の「俺は客だぞ!」と凄む神様は、店員さんを同じ人間(あるいは神様)とみなすことが出来ない、まるで邪神のような存在に変化してしまったのでしょうか……少し妄想が過ぎましたね(笑)。
現代の私たちは、あまりにも恵まれすぎていて、**「恵まれている事にすら不満を覚える」**という贅沢な病にかかっているのかもしれません。
本来、人間というのは「人に与えて、恵む立場」の時にこそ、真の幸福感を得る生き物だと言います。 しかし私たちは、「恵まれる立場」を享受しすぎた結果、「恵み」の本当の価値と対価を忘れてしまったのかもしれません。
天の恵み、大地の恵み、神の恵み。
このまま勘違いが続けば、そのうち私たちの社会から「恵み」という言葉そのものが無くなってしまうかもしれませんね。
いや、もしかしたら、「神様」がなくなりつつあるのかもしれない・・・


