高齢者歯科医療講習会

高齢者歯科医療講習会

はつおい歯科室 べいちょうです。

浜松市歯科医師会で高齢者歯科医療講習会を受講してきました!
三本立ての講習会でとても考えさせられるといいますか、そんな内容でした。
会場に50名、オンラインでも開催されていたので、かなり多くの先生が出席されていました。

講演①「口はどう老いていくのか?」
日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックの菊谷先生による講演でした。実はつい先日も、オンラインでしたが講習会を受けさせていただきました。実は学生時代にも講義受けた事が有りますし、母とも講習会を受けた事が有ります。口腔リハビリテーションの第一人者とも言われる方です。

口から考える認知症 食べるチカラで、生きるチカラを』(読売新聞社主催 ハート・リングフォーラム2023)
こちらのページに菊谷先生のドキュメントが掲載されています。

先にも書いたように、考えさせられる内容でした。8020は達成したものの、要介護者の口の中は誰が面倒を見るのか。歯科はそこに介入できていない、と言います。歯はプラークの付着する場所で、歯ブラシが出来ないと一気に汚れが溜まります。しゃべる事も減り、硬い食事も減るとプラークは更につきやすくなります。そこへ認知機能の低下や薬による反射の低下、筋・神経の異常による不随意運動などが重なる事で食事の誤嚥や唾液の誤嚥が始まり、誤嚥性肺炎を引き起こします。歯を残す事が本当にいい事なのか。残せない歯は、すぐにでも抜いてあげた方が良い、というのが菊谷先生の毎回の講義でのお話です。なぜなら、70代後半になってくると自立が困難な方が8割ほどになるからです。家族に迷惑をかけたくない、という言葉は患者さんからもよく聞こえてくる言葉です。「ピンピンコロリが良い」そんな言葉も耳にしますが、それを達成できる方は1割に過ぎないといいます。菊谷先生は「75歳以上の人で、フレイルに当てはまるのだとしたら、医院に来てくれるのはその日が最後の可能性がある。」と何度もおっしゃっていました。だとしたら、治療の方針が変わるのは当然ですよね。というお話でした。また、足腰と同じように口の中も衰える事を気がつけていない、というお話もありました。食事はかなり高度の動作である事が知られていて、目で認識して脳で判断する、どんな食べ物でどんな量なのか、唇で感じる温度感や柔らかさ、歯で感じる方さに適した咀嚼運動、咀嚼を助ける舌の運動、飲み込むための舌と喉の運動、それらが一つでも欠けてしまうと食事が困難になってしまいます。高齢になって食事がうまくいかないのは、実は不思議な事ではなく、実はトレーニングで回復できるんですよ、というお話もありました。

②ストップ トラブル! 歯科訪問診療のあれこれ
浜松市歯科医師会 地域歯科保健医療部部長の鈴木隆之先生が講演してくださいました。日頃から訪問診療をされていて注意している事や見るべきポイント、緊急時の対応や機材などを教えてくださいました。大学で習ったはずのテーマだったりするのですが、ついつい忘れてしまう、けど大切な部分のお話です。基礎的な情報でも日頃から向き合えていないとつい疎かになってしまいますね。菊谷先生のお話にもありましたが、歯科が求められている役割を歯科は全うできていない、という事を改めて感じました。また衰えてしまった機能も歯科の介入で回復してあげることが出来る、という事も症例を交えて教えて頂きました。

⓷はじめてみようミールラウンド
日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックの戸原先生による講演です。先述した菊谷先生が口腔リハビリテーション多摩クリニックの院長をされていて、戸原先生は菊谷先生とお仕事をされている先生です。「ミールラウンド」という言葉はあまりなじみがないかと思います。私も学生時代と研修医時代に習った程度で、研修医時代に一度見学はさせて頂いたものの、継続して学ばないとなかなか中身の見えてこない分野です。「ミールラウンド」は何をするかと言えば、「食事の観察」です。どんな環境で何を、どんなふうに食べているのか、を施設に入居されている方を対象に行います。これは歯科医師だけでなく、介護に関わる介護士、栄養士、看護師、ソーシャルワーカーなど多くの人とこれを行って、意見を出し合いながら行っていくものです。そこで歯科医師が出来る事、大切さを教えて頂きました。対象になる方が認知症であったり、脳血管疾患であったりなど、コミュニケーションが難しかったり、体を動かす事が難しかったりする中で原因を探り、リソースも限られる中で何が出来るのか、何をしてあげられるのか、考える難しさややりがい、またどうしても迎えざるをえない死について、考える事が出来る講義でした。

学生の頃から何度も聞いた事のあるはずの内容でしたが、歯科医師になって改めて講義を受けると重みが違いますね。ふだん診療室にこもっている歯科医師として、自分の不甲斐なさといいますか、自分の至らなさを知ったといいますか。多くの患者さんが家から出られずに歯科を受診できていない、という現実を改めて考える事のできた講義でした。私の、はつおい歯科室の考え方で、他の医院に受診できない人を助けたい、という思いがあります。それが歯科恐怖症の方や心身障がい者への対応だったりなのですが、訪問診療に力を入れないと、患者さんを見捨てる事にもなってしまうのだと、思い知りましたね。

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